2019年02月13日

思い出のレコードからE〜クレツキのシベ2

中学に入学した年の春、「完全に」自分の小遣いだけで買った最初のレコードがこれだった。
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シベリウス:交響曲第2番二長調op.43

   パウル・クレツキ(指揮)
   フィルハーモニア管弦楽団

(セラフィム LP 国内盤)




それまでは、レコードを買う時は、親がお金を出してくれていた。
但しその場合、何か特別な機会に限られたし、「家族で楽しめる系」の音楽になるので、この種の曲は除外されていた。 せいぜいヴィヴァルディの「四季」が限界点だろう。
実際、これを購入する1ヶ月前に「四季」を買ってもらっている。
そんなわけで、これを選んで、自分の小遣いで買ったというのは、ある意味大きな出来事だった。
今考えれば、これがその後の自分の嗜好の方向を決定づけるものだった。

なぜこの曲だったか。
買った日のことを覚えている。
それまでよく行っていたレコード屋がその日はたまたま休業で、開店して間もない店を覗いてみたのだった。
小さい店なのでクラシックは300枚前後しかない。しかも予算は1200円ぐらいまで。
しかし幸い、この店の品揃えはセラフィムとコロムビアの廉価盤(いわゆる1000円盤)が中心だったので、選択肢は少しはあった。ベートヴェンやモーツァルトはまあ、親に言えば買ってもらえるもの…ということで、近代のものを漁ったわけだ。
いきなり手にヒットしたのがこの盤だった。偶然であって、何の想いもない。
ただ、すでにシベリウスの1番や、幾つかの初期の交響詩はFMやFENで聴いたことがあり、「2番もきっと良さげ…」という、それだけの根拠である。
指揮者クレツキの名も知らないし、特に欲しくなるようなジャケットでもなかったのだが…出逢いとはこんなものなのだ。
好きな曲を買うのではなく、買って繰り返し聴くことで好きになる。
いや、好きにならなかったら小遣いがもったいない!だから好きになるまで聴く。
そんな決心の上で鑑賞に取り組むという、決死パターンだ。
店長さんはどう思ったろうか。なんだか小さい子がクラシックのわけわからんレコードを買おうとしている、ぐらいか。当時の自分の身長は130p以下。チビで細かったから小4ぐらいにしか見えなかったはずだ。この店長さんにはこの後20年以上お世話になるわけなのだが、この時はまだそのことはわかっていない。

さて、この盤、全体にすっきりとした演奏で聴きやすいと感じた。
ただ、当時の感覚では、気まぐれな動機が現れては消え、その感情は喜怒哀楽どれにもあてはまらないもののように感じていた。しかし、終楽章の雄大さはこれまで聴いた音楽のどれとも違った。
母の感想は「これは難しいね。グリーグのほうがいいよ。」だったが、僕は満足だった^^
ここから始まる音楽登山の結果、家族もきっとすぐに耐性をつけたことだろう。

今、改めて聴くと、この演奏は特に「フィンランド風」を強調してはいないが、第2楽章の「間」や独特のリズム感覚があって、北欧より幾分南下した温度感があると思う。
この曲の成立にはイタリア旅行の強烈な印象が影響を及ぼしているとのことだが、当然そこまで暖色ではない。イギリスのオケをポーランド人が振った、ときけば、納得の演奏だ。
LPには録音年の記載はなかったが、後に1955年のものだと知った。
ステレオ初期のものと考えたら、技術陣もなかなかの健闘だと思う。3楽章での音の揺れ、終楽章だけ所々音場が違うとか、マニアックに音にこだわってしまったら批判もあるだろうが、まあ、通常の家庭の再生環境なら問題ないと思う。あれこれ音をいじっている様子もなく、素朴さがシベリウスには似合っているように感じた。
何よりこの演奏の歌心、高揚感に感動した思い出が勝る。
この演奏を聴かなかったら、シベリウスを聴き続けていなかったかもしれないし、とにかく、素晴らしい出会いの1枚だった。

ところで、この盤は同じ規格番号で青いジャケットのものも存在する。1000円盤という価格があっけなく破綻して1200円に値上げされた関係もあるのだろうか。
また、保管時、シュリンクをはずさなかったので経年変化でつっぱって、ジャケットが歪んでしまった。
だが、中の盤には何の影響もなかったようだ。レコードは本当に強いメディアだと思う。


posted by あひる★ぼんび at 23:21| Comment(4) | 音楽
この記事へのコメント
こんばんは…ってか、日本はこんにちはか。

自分ら世代にとってセラフィムの1000円盤はお財布の救世主でしたよね。本当に、そういった廉価盤ブームと重なったのは幸運でした。
その中でも、このクレツキのシベリウスは、私も好きでした。
冷たすぎず、こってりしすぎずで、壮大なコーダに向かって音がつみあがっていく音響にワクワクでした。
他にセラフィム盤で愛聴していたものはありますか?
私はストコフスキーの惑星なんかが好きでした。

Posted by サルミアッキ at 2019年02月24日 13:47
おはようございます! …であってるかな^^

セラフィムのラインナップは結構魅力的でした。
僕もホルストの惑星は気に入っていました。火星のコーダのドラとか、他と違う個性的なエディットが面白かったです。
フェラスのメン・チャイやメニューインのバッハ管組とか、ペナリオのグリーグ・ラフマとか、結構節操なく聴きまくりでした。
考えて見るとあの頃からCD普及までは、あらゆる音楽がレコードになっているスゴイ時代でしたよね。CDに変わってからしばらくは通俗名曲と有名演奏家だけの時代になってしまったわけですから、その前に入門期を終えられたのは、もしかするとラッキーな世代だったかもしれませんね。
Posted by あひる★ぼんび at 2019年02月24日 17:01
おはようございます。パウル・クレツキはチェコPOとのベートーヴェンやフィルハーモニアとのマーラーがCD化されてから聴いていました。シベリウスは聴いたことがなくて、国内盤LPでも発売されているのには感心します。昨年末からLPレコードを再び聴き出して、店頭で購入する際に新譜時の様子などを聞いて、例えばホーレンシュタインのマーラーなんかも国内盤があったので同じく感心していました。自分でLPを初めて買ったのはハイドンの天地創造でしたが、二枚組で3000円台だったのも理由の一つでした。
Posted by ライムンド at 2019年03月17日 10:47
こんばんは。コメントありがとうございます^^

70年代半ば、次々と発売されるLPのラインナップは今考えるとスゴイの一言でした。マニアックなことこの上なく、国内盤ですらそうでしたから、輸入盤などは玉なのか石なのか、人によって極端に評価が分かれそうな感じでしたね。ホーレンシュタインはユニコーン原盤のものが確かパイレーベルあたりから多数出ていて、ニールセンなどを聴いてました。
80年代にはいる頃にはブルックナーやマーラーの流行で、各社大量リリースでしたが、そちらは友人にまかせて、自分は只管北欧物とリートばかり追いかけていました。

ファーストLPが「天地創造」とは、すごい!カラヤンのスタジオ盤など、かなり話題でしたよね。
Posted by あひる★ぼんび at 2019年03月17日 23:12
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