2018年04月20日

ローゼンのレコード

チャールズ・ローゼン(1927−2012)はアメリカのピアニスト。
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フランス文学の博士であり、人生の大半を文筆家とフランス語教育者として過ごした。
オックスフォード、ハーバード、シカゴ他、一流大学のフランス語教授として教鞭をとる傍らのピアニスト活動だった。
また、そのピアニスト業はコンサートをメインにしていたので、同世代の奏者と比べると録音は多くはない。
しかし、実力と業績は大きく、現在でも残されたもののほとんどをCDで聴くことができる。

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ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op21
リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調

リチャード・ローゼン(ピアノ)
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ジョン・プリッチャード(指揮)
(odyssey LP 米輸入盤)



この演奏は現在は普通にCDで聴けるわけだが、これはLP盤。
中古屋でたまたま手にした米国輸入盤で、ジャケットの劣化が激しく盤もカビカビ。安価なジャンク扱いだった。実は、このレコード、アントルモンのコーナーに紛れていて、気づかず買ってきた…というのが正直なところ。
針をおろす前にアルコールでカビや付着物をふき取り、電解水で洗浄して…その時、レーベルの演奏者名を見て、ありゃ???と初めて気が付いたのだった。
ローゼンか…と、特に何のイメージも期待もしないままに針をおろした。

ショパンの第2協奏曲の前奏の音を聴いてびっくり。
なんと懐かしいアナログ特有の厚みあるオケの響きだろう!そして、鮮やかで凭れることないピアノ。
確かに、「ショパンはかくあるべし」といった一般に期待されるロマンティックな演奏とは違い、ドイツ古典派のような雰囲気もある。
アラウの演奏に通じるような重心の低さで、バッハやモーツァルトの古典様式美に憧れていたという若きショパン像が見えてくるようだった。
テンポは標準的だが、、しかし体感時間の短い演奏だった。
プリッチャードはオーケストラをかなり豪快に鳴らしていて、ショパンにありがちな管弦楽パートの瑕疵も感じなかった。
続くリストは…こちらも落ち着いた演奏。ローゼンはショパンと同じテンションと音で取り組んでいるようなのだ。曲が曲だけに、こちらはもっと派手に演出してもいいのでは?と思ってしまった。
自分はこの曲自体があまり好きではないのだが、案外と楽しめた。
特にトライアングルのリアルな響きが面白かった。普通は控えめに聴こえるように調整するだろうに、ここでは恥ずかしい位にチロリンチロリン。この存在感は「トライアングル協奏曲」と揶揄される姿そのもののバランスだった^^

ローゼンはショパン弾きとして名の知れたローゼンタールの弟子であり、しっかりした知識博識の持ち主だった。ヴィルトージティに遠く、常に音楽学的で曖昧さがない。サービスに欠けた演奏は、評判が上がらなくても仕方ないだろう。だがこの、地味ながら誠実さを感じる演奏は忘れがたい好印象を残す。
偶然聴いた盤だったが、今後、愛聴できそうだ。

posted by あひる★ぼんび at 20:41| Comment(2) | 音楽
この記事へのコメント
こんにちは。お久しぶりです。
今年は気候のせいか不調な日が多いです。
あひる★ぼんびさんは体調大丈夫ですか?

さて、ひょんなことから手にされたレコードが愛聴番になりそうだと言うお話、興味深く拝見しました。
こういう偶然の出会いもいいですよね。
レコードはカッティングによって音が変わることなどレコードの奥深さを、以前教えていただきましたが、この演奏もCDだとまた違った音質やトライアングルが控えめだったりするのでしょうか?

プライさんのDECCA盤の「白鳥の歌」も、輸入レコード、RONDON日本盤CD、2014年輸入DECCA盤CDはそれぞれ音が違って面白かったです。
日本盤が一番激しい音でした。

ピアノに詳しくはないですが、演奏というのは不思議なものですね。
普段は、何かしらメッセージを乗せて演奏するものだと思って聴いたり演奏したりしますが、あまり自己主張のない演奏が心地よかったり心に残る事があります。
この方の演奏もこれみよがしの主張はなくとも、たくさんの知識や音楽学に支えられた内面性が音に出ているのかもしれませんね。
Posted by 真子 at 2018年05月09日 12:19
お久しぶりです。真子様も大変なようですね。
お大事にして下さい。
こちらもちょっと厳しい春でした。
必ずしも回復はできていませんが、仕事は平常とペースを変えぬよう努力しています。
そのぶん音楽から遠のいていて、ブログもサボりぎみになってしまいました^^;

中古レコード屋やオークションにはこういう偶然の出会いがあって、それが楽しみでもあります。
例えばこれにしても、アントルモンのつもりだったわけで、ローゼンだったらあえて買わなかったかな?
きっとこの盤が「聴いてくれ!」と言っていたのでしょう^^
汚れを落とした後は傷ひとつないものでしたから。
名演かどうかといったら実際は「ごく普通」かもしれません。でも、それがいいのです。師匠譲りの解釈への自信も感じました。

録音上のバランスはリミックス・リマスタリングされる「CD化」で大きく変わってしまうものです。このトライアングルも多分違っていると思います。
全般的に打楽器類の空気感はLPのほうが勝っています。DECCAステレオ第1号のオルウィンの1812年・イタリア奇想曲などもタンバリンの存在感にノックアウトされました^^
不思議なことだと思います。
Posted by あひる★ぼんび at 2018年05月11日 18:05
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