2018年01月13日

思い出のレコードからD〜レスピーギの「鳥」

考えてみると、好きな音楽、思い入れの大きい曲は、そのほとんどが20歳前後までに聴いたものだ。
やはり感性のスポンジの柔軟さや吸収率は、その頃までが優れているのだろう。
さらに人生の中での「初心の感動」の作用は大きく、最初に何を聴くかは後々に大きな影響をもたらすもののようだ。

レスピーギの「鳥」を初めて聴いたのは中1の頃だった。
ドラティの演奏だったと思う。FM放送をカセットテープに録って何度も聴いた。
「めんどり」の原曲のラモーの曲は知っていたし、「ナイチンゲール」のメロディはヴァン・エイクのリコーダー曲として聴き覚えていた。一番印象深かったのは「鳩」。
関係ない事なのだが、それを聴いて思い浮かべたのは、家族で見に行った「メリー・ポピンズ」の映画の中の「2ペンスを鳩に」のシーンだった。それは聖堂前の階段で貧しい身なりのおばあさんが鳩に餌付けをしている様子。
この組曲の他曲に比べると、この「鳩」は、言われなければその鳥とはわからない。レスピーギは楽器法の工夫で鳴き声らしき演出は施してはいるが、原曲自体に描写性はないのだろう。でも、どこか悲しげなこのメロディに、見たこともないヨーロッパの寺院の風景や空、飛び立つ鳩の影が重なり、心に焼きついて離れなかった。

高校時代、その「鳥」がマリナーの新録音・新譜として発売された。

resgli.jpg
レスピーギ:
「鳥」
「ボッティチェルリの3枚の絵」


ネヴィル・マリナー(指揮)
アカデミー室内管弦楽団
(エンジェル LP 国内盤)



この頃、マリナーのレスピーギの演奏は「リュートの為の古代舞曲とアリア」をすでに聴いていたが、ドラティと比べると幾分スマートすぎるように感じていた。
あのように上品に優雅に流されたらちょっとなぁ…と少し心配があった。
しかし、この曲に関しては、むしろ丁寧さとその上品さが良かった。
かなり小編成のようで、鮮やかさと軽やかさが健康美を生んでいるようだった。
また、B面の「ボッティチェルリの3枚の絵」はこの盤で初めて聴く曲だったが、第2曲のエスニックな不思議な音色が印象深く、何度も聴きかえした。この時もこの後も、「好き」な曲にはなっていないのに、印象深く、まるで「性格俳優」のような音楽だと思える。「鳥」もそうだが、聴きやすい演奏時間の曲。いや、つまりこの盤、収録時間が短いのだ。

音楽とは関係ない事だが、実は、購入したその日、レコードをかける時にミスを犯した。
ワクワクしながら買ったばかりのレコードを居間のテーブルに置く時、よく確認しなかったために、たまたまこぼれていた芳香剤をしっかりしみこませてしまったのだ。
以後、CD化されるまで何年間も、この曲をかける度にその匂いも楽しまなければならなくなった^^;

その後CD時代に入って、マリナーはフィリップスにこの曲を再録音したが、曲自体の温度感の印象が違って当惑。
旧盤のCD化再発を待つしかなかったが、いざ再発ものを聴いてみても、違和感が先に来てしまった。
結局どうしてもそのCDの音に納得できず、廉価再発盤のLPを再購入。
(この記事のジャケット写真はその再発盤)
これも若干、音の印象が違う気がする。つまり、脳内で架空の印象が作られていた疑惑が生じることになった。
…こうなると結局香しい盤の方を聴き続けることになる。
まあ、この曲は匂いの記憶と完全にセットになっているわけで、もはやそれでもいいと思えている。
posted by あひる★ぼんび at 21:59| Comment(0) | 音楽
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