2020年09月06日

思い出のレコードからI〜若きフェラスの演奏

続けて、前記事ペナリオと同時期に購入のもの。

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チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調Op.35,
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調Op.64


   クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)
   フィルハーモニア管弦楽団
   コンスタンティン・シルヴェストリ(指揮)
(セラフィム LP 国内盤)




実は、最近ネットオークションでその2枚を落札し、再鑑賞の機会を得たので、この記事を書いている。
ペナリオのグリ&ラフもこのフェラスのメン&チャイも、CDを買い直すことはしなかった。
「これでなくては…」というインパクトではなかったというよりは、レコードで満足できたことや、次々に現れる新盤からのチョイスを優先してしまったためだろう。

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独奏のクリスチャン・フェラスは1933年生まれ。1982年に49歳で没したフランスのヴァイオリニスト。
フェラスは若い頃は、並はずれた技量と、端整なルックスでスター奏者となり、EMIやDGに多数の録音を残した。
ただ、神経質な性格が災いして、過度の飲酒癖と鬱病をかかえていた。
自宅ビルから投身というショッキングな人生のピリオドを迎えるまで、コンサートは続けたものの、世間の演奏評価は安定しなくなっていたようだ。
この盤の録音は1957年。ここから感じる「自由な歌心」は光っていて、今も色あせることはない。
この後の一連のDG録音の、メーカーや指揮者を忖度してしまったようなものより、ずっと良い演奏に感じた。
「良さ」というのは演奏精度とか録音の状態だけではない。フェラスが上り調子だった時期のこの盤は、とにかく演奏することに喜びが溢れているようで、美しく颯爽としている。
メンデルスゾーンのロマンティックな…例えば第1楽章第2主題のような部分での独特の粘りと夢見るような解釈は自分の好みにぴったりだった。全体に活発な演奏で、翳りなく爽やかだ。
チャイコフスキーは一般的な版(アウアーらの手による改竄版、つまり適度にカットが施され、編成も現代オケにあわせてある)で、演奏されている。結構目立つカットがあるが、それさえ気にしなければとても聴きやすい演奏だ。初めて聴いた頃は他を知らないこともあり、違和感がなかった。

メンデルスゾーンの協奏曲は、当時、中2の鑑賞教材になっていた。授業で聴く1年前にレコードを買って聴いていたことになる。小学生の頃、父や母とレコード屋に立ち寄ると、「ねえねえ、これどんな曲?」などと、主題を鼻歌で歌ってもらった。また曲の印象を細かく訊いたりもした。まあなんというか、迷惑だったろうに、よく嫌がらずに相手をしてくれたなあ、と今更に思う。だからこの曲も低学年の頃から鼻歌で知っていた(笑)
また、中学生ともなれば、ヨーロッパの中での「ユダヤ系」の苦難について、いくつもの本から知識を得ていた。ところが、教科書の解説は何を学ばせようとしているのか不明な内容だった。
「メンデルスゾーンは裕福な銀行家の子息で、音楽も明るく伸びやかで幸福感にあふれている」とか。
まあ、貧乏作曲家よりはずっと安定していたのは確かだが、民族問題を匂わせるのはご法度だったのだろう。
19世紀中くすぶり続け、20世紀に入ってからはユダヤ排斥で演奏禁止・楽譜焚書までおこるわけで、そんなことも含めて教える勇気は、多分教育界にはないのだ。

それより何より、フェラスを知らない方は、ぜひ、この盤をきいてもらいたい。
カラヤンとのDG盤ではなく、このシルヴェストリの誠実なサポートの、この盤を聴いてほしい。

posted by あひる★ぼんび at 21:11| Comment(2) | 音楽