設定をあくまで「借り」たのであって、物語は基本フィクションである。
ゆるゆるの軍規、甘い訓練、やけに容易すぎる離着陸をはじめとする機の扱い、何やらつっこみ所が多いのだが、不思議と傷にならず、しっかり楽しめる映画だった。
戦争を楽しむとは不謹慎な、と思われるかもしれないが、実際面白いと思ってしまった自分がここにいる。
のっぴきならないワケアリでアメリカからフランスに渡って入隊した連中であるから「愛国心」とか「厭戦・反戦意識」がない。
物語的にもわざわざそれを挿入しない。
若者たちは戦友や自分の死を恐れつつも、まるでスポーツのように撃墜数をあげることに集中する。
また、そのことに対しても善悪を問うたりもしない。
つい最近公開された「レッドバロン」(何か評判は芳しくないようだが)は見ていないが、旧作の方には、「共産主義者を粉砕する」というセリフまで撃墜王フォン・リヒトホーフェンに語らせ、空で英仏と闘うだけでは済まない複雑な事情や、イデオロギーを描いていた。
それはやがてナチスに引き継がれていく思想の萌芽を感じるものだった。
しかし、この「フライボーイズ」には何もない。
極端に言えば、行き所のない不良たちの一種の更生物語(ただし、死と隣り合わせの)みたいな、あるいは形を変えた「アメリカンドリーム」のノリになっている。
航空兵だった伯父から以前聞いたことがある。
「年端もいかぬ若造には、戦う意味なんかわかるわけがない…さんざんおだてられて、時に恫喝うけて、飛ばされる。出撃の数時間後にはさっき一緒にメシを食った戦友がポロポロ欠けている。そんなふうに命が軽いからあんな重い飛行機が飛ぶのかもなぁ…。」
そんな言葉をふと思い出した。
この映画も、命がとても軽い。
与えられたミッションは「出会ったドイツ機をすべて落とす」のみ。
空を飛び回る爽快感の中、痛みも恐怖も悲しみも、麻痺しているようだ。
そんな麻薬症状が、あるいは戦争の本質であり、怖さなのかもしれない。
人間関係の描き方が淡白でドライである点も、映画の受け手は、対戦ゲームのプレビューのように感じるのではないだろうか。
余計な涙がない。次々と欠けていく戦友、死も起こるべくして起こった事象のようだ。
と、これだけ書くと、冷徹な殺人集団の物語かと思われてしまうかもしれないが、最初に書いた通り「ゆるい」ので、そうはならない。
フランス村娘とのロマンスや、軍規を犯して彼女を占領区域から脱出させるエピソードの挿入などで、地上での彼らの人間らしさや、戦時の青春のせつなさも挿入されている。
この映画に出演者で、知名度の高いジャン・レノは、静かな父親のまなざしで若いパイロットたちを支える隊長役。
時として大根の汚名をきる彼ではあるが、ここでは彼の「ゆるさ」が良い味になっていた。
実写+CG+ミニチュア特撮をうまく扱った空戦場面は、当時の実機ではありえない場面も多々あるものの、非常に血圧の上がりそうな場面作りで、素晴らしい。
なんでドイツ軍のフォッカーが、カタキの親玉(黒)以外は全部赤なんだ、とか、失速も分解もせず性急な上昇下降、旋回を繰り返すんだ、とかまあ、それもいろいろケチはあるが(笑)
ボーナスディスクの、ミニチュア撮影のメイキングは面白かった。
ワイヤーで模型を飛ばす様子が、昔懐かしい怪獣映画風。
搭乗員の人形をレポーターに仕立てた奇妙なチープさもかなり楽しめた。
映画は、娯楽である。そしてこれはアメリカ映画。
それを押さえた上なら、たっぷり楽しめる2時間50分だった。

